はじめに
戦後、祖国の復興を目指し、日本に青年会議所が誕生してから67年。その間、我が国は先達の語り尽くせぬほどの熱い情熱と弛まぬ努力によって、有史以来稀にみる経済成長を果たし、世界有数の先進国のひとつとなりました。そして、我々はこれまで紡がれた歴史の上で、現在の豊かさと平和を享受しています。しかしながら、バブル経済崩壊後の失われた20年から景気は徐々に回復基調と言われ、長引くデフレからの脱却に微かな希望が見えつつある現在でも、大多数の国民は日本経済の景気回復を肌で実感できず、政府は財政健全化とのジレンマにより未だ暗中模索の状況が続いています。世界に目を向ければ、第二次世界大戦以来世界をこれまで牽引してきた同盟国アメリカでは、自国優先主義のアメリカン・ファーストを叫ぶトランプ政権が誕生して以降、選挙時から続く米国内の分断を修復できず、支持率も低迷したままとなっています。また、海を隔てた隣国北朝鮮では、相次ぐ国連の声明や制裁の中でもミサイル実験を繰り返しており、拉致問題を抱える我が国の安全保障にも大きな不安を作り出しているのが現状です。更には遠くヨーロッパでは、イギリスのEU離脱を契機にナショナリズムの顕在化とそれに反するグローバリズムの軋轢が増しています。一方で、近年世界中に拡がったグローバリズムの波は宗教間や民族の対立と貧富の格差をこれまで以上にもたらし、貧困に喘ぐ人々が世界中に依然として数多くいることも忘れてはならない事実です。これらからも、我が国日本を取り巻く国際社会の情勢は、まさに混迷の只中にあると言っても過言ではありません。
では、我々はどのような考えに立ち、これからの日本と世界の中で生きていかなければならないのでしょうか。私は今失われつつある、古より培われた日本人の心、精神性こそが拠り所となると考えます。それは、自然に対する感謝と畏敬の念から始まり、自分を律し、礼儀正しく、他者を思いやり、協調を重んじるなどといった心です。また私自身、幼少期に触れた道徳心の一つとして「お天道様が見ているよ」と祖母から度々言われてきたことは今でも忘れることがありません。お天道様は自分自身の心と置き換えることができ、自らに誠実であり、自身の心にとって恥ずかしいことはできないという日本人の美意識を強く意識させられました。これらに表される世界の手本ともなり得る日本人の心と精神性を想い起こし、自身に宿していくことが重要であり、現在の国際社会では自国の歴史に立脚した人格と互いに協調する心こそが、共存と共栄に必要不可欠となるはずです。
Challenge!~自己とまちの可能性を信じて~
我々を取り巻く社会環境は日々変化し続け、未来は予測し難いものとなっています。そのような先の見通せない不確かな時代だからこそ、我々青年は眼前にある諸問題に真摯に向き合い、未来を思い描き、理想の実現に向けてチャレンジをしていかなければならないと考えます。そのためにもまずは自分自身を見つめ直し、自らが変わらなければなりません。たとえ、どのような困難があろうと自らが選んだ道だからこそ、前向きに捉え全力を尽くせば、物事の大小に関わらずその積み重ねが自身を変革させ、自ずと周りにも波及していくことでしょう。やがてその一歩は必ず、我々のまちのためにも繋がっていくことと確信いたします。地域の未来をより良くしていくためには、長期的な視野に立ち、幅広い意見を取り入れながら活動を持続していかなければなりません。しかしながら、青年会議所は一年ごとに個々の役割が替わる単年度制を取り入れており、一年のみで成果を残すことが難しい場面も多くなってきています。ですが、この特性を地域にとってタイムリー且つ最適な課題に取り組んでいくことができるのだと肯定的に考え、我々にしか為し得ない役割があると信じ、臆することなく一歩を踏み出しましょう。すべては自分自身の一歩から始まるのですから。
愛するまちの可能性を信じる
日本国内における人口減少と過疎化が大きな社会問題としてクローズアップされてから、いったい何年が経ったのでしょう。我々の住まうこの妙高地域でも人口減少と過疎化は年々進み、地方の衰退は一層深刻化しています。政府が進める地方創生政策がこれらに対する解決のための起爆剤として期待されている中、賃金や安定性、やりがいなどの点でより良質な雇用の場を求め、都会への憧れといった心理的要因とも重なり、少なくない数の若者が毎年東京をはじめとする大都市圏へ流出しています。若者の減少は地域の発展の可能性と活力を奪うだけでなく、これまでに育まれてきた歴史や文化、伝統の継承も困難にさせます。また、それらを内包する自然環境の維持も危うくなるのは当然の帰結と言えるのではないでしょうか。このような負の連鎖は全国の至る所で散見されつつあり、2014年に民間有識者団体の日本創生会議より消滅可能性都市としてピックアップされた我々の妙高地域も残念ながら例外ではありません。妙高地域で生まれ育ち、一度は故郷を離れ再びこの地に住まう私にとって、このような状況に陥り衰退していくことは看過できません。今まさに、地方の衰退に歯止めをかけることは喫緊の課題と言えます。
私は青年会議所が掲げる明るい豊かな社会とは、地域に住まう人々が地域に誇りと愛着を持って、生き生きと共存できる社会と捉えています。創立以来今日まで、多くの先輩諸氏は雄大な自然環境とそれがもたらす資源といった妙高地域の持つ特性を生かし、多角的な事業を実施し活動してまいりました。そこには地域に生まれた者として、次世代により良いまちを引き継ぎ、遺していくという使命感が根底にあったのだと考えます。我々は先輩諸氏より続くまちづくりの想いを実現すべく、地域の現状と課題を確りと認識し、どのような運動を効果的に展開していくべきなのか真剣に考え行動していかなければなりません。行政をはじめ地域に住まう人々との連携はもちろんのこと、その行動は共感を生み、多くの支持を得られるものであることも重要です。その一歩があまりにも小さく、たとえその時に上手くいかなかったとしても、我々は決して諦めてはいけません。機を逃すことなく青年らしく勇気と情熱を持ち、未来のために相応しい運動に挑戦しましょう。今この時、この場所でしかできないことが必ずあると信じて。
人と人とのつながりから生まれる可能性を信じる
現代の社会環境は以前より大きく変わっています。晩婚化とそれに伴う少子化や核家族化といった社会構造の変化に加え、ITの発達によるインターネット、SNSなどの普及と相まって、子どもはもちろん大人でさえも人と人との直接的な交流が減少しています。あらゆる技術の進歩によって、生活の利便性が飛躍的に向上し、未知の可能性を秘めている一方、世の中には多すぎるほどの情報が溢れ、そこから派生するフェイクニュースといった諸問題が新たに起きていることも事実であり、多くの人々は何を信じ求めていけば良いのか分からなくなっているように思えてなりません。多様化が進み、ボーダレスな現代社会において、人それぞれ考えや大切なものが違うことは当然であり、そういった価値観の違いを認め、互いに尊重していかなければならないのは言うまでもありませんが、本当の自分を他者がどのように評価し、受け止められるかということに怯えるあまり、外面だけのコミュニケーションが増え、内面からの付き合いが希薄化しているとも言えるのではないでしょうか。
そのような中で、人が生きていくうえで何が真実かを見極める力、必要な情報を選り分ける力が重要であり、それは人と人、心と心の通った交流のなかでこそ育まれるものと考えます。相手がどのようなことで喜びを感じ、何に対して怒りを覚えるのか、といった根本の感情を理解することや、相手の立場に立って考える想像力が大切です。人は自身と他者との関係性の中で成長していきます。そこには子どもや大人といった区別はありません。本当の人間関係は人と人とのつながりからしか生まれてこないのです。我々は失われつつある人の営みを取り戻すために、日本人としてこれまでの歴史から学び、おもいやりや助け合いといった利他の精神や自然の恵みに対する感謝の心といった日本人の精神性を伝え、確固とした人格を形成していかなければなりません。我々大人が自分自身を見つめ直し変わっていくことで、子どもたちの規範となり、共に成長できるはずです。
連携から生まれる地域の可能性を信じる
日本の青年会議所は新潟県内で22、全国では696の各地会員会議所から構成され会員数は約36,000人を超えており、他に類を見ないほどの大きなネットワークがあります。それはただ大きく広いだけでなく、修練・奉仕・友情のJC三信条に基づいた強固な絆で繋がっています。この青年会議所だけにしかない特徴を活かし、我々の地域と同じような諸問題を抱える他青年会議所のこれまでの運動や経験を学び、地域に還元していくことが我々JAYCEEの責務と言えるでしょう。(一社)妙高青年会議所は、これまでの先輩諸氏から連綿と受け継いできたRINX-4をはじめ、近隣青年会議所や関係諸団体との深い絆の歴史と実績があります。今一度、そこに想いを巡らせ、過去から学び、現在の実情に即した事業を実施し、未来へ向けた足跡を残さなければなりません。
2015年3月の北陸新幹線開業後、2018年に完成予定の上信越自動車道4車線化を以て、これまで計画された当地域周辺の高速交通網整備は完了となります。このような広域的にまたがるインフラはその性質上、従来の各市町村単位といった小さな受け皿だけでは利用者のニーズに応えるのが難しくなっているため、ますます周辺地域との密接な関係の構築と協働が必要不可欠となってきます。言い換えれば、行政をはじめ、各種団体や青年会議所同士との連携なくして地域の未来を豊かなものにしていくことが難しくなっているとも言えます。高速交通網の整備は交通の利便性向上、来訪者の増加、交流人口の拡大といった長所とは別に、ストロー現象と言われる人口流出、企業の営業所の集約と効率化による撤退など、経済規模の縮小が地域内の弱体化や空洞化を招くという短所も懸念され続けています。我々はこの現実を受け止めながらも青年らしく前向きに、地域の活性化に取り組まなければなりません。負の部分を殊更に取り上げて不安になるよりも、今ある資源を地域の将来のために有効活用し、地域のブランド化の推進や新たな価値やサービスの創造を模索しながら、地域の発展のために活動を続けることが必要なのです。
自己の可能性を信じて…その先にあるもの
日本の青年会議所では会員構成全体の9割を経営者や役員といった企業の中核を担う人物が占める中、徐々にではありますが一企業の従業員である会員も増加傾向にあり、私もそのうちの一人です。そういった境遇からか私自身、入会当初はある種偏見の目でこの組織を見ており、活動にも消極的でありました。そのような私を変えてくれたのは、「人」に他なりません。青年会議所という組織に入会して得られるものは数多くありますが、最たるものとして人との出会いと繋がりの機会を得られるということが挙げられます。しかし、青年会議所はただ在籍していれば何かを与えてくれるわけではありません。自己の成長や新たな学びを得て、そこから地域に対する更なる愛情を深めるためには、自ら考え率先して行動する必要があります。まずは、何事も自分から挑戦していきましょう。まだ見ぬ未来を変えていけるのは自分自身です。限りある青年の時間を共有できることに喜びと感謝の心を忘れることなく邁進していきましょう。
会員の拡大は組織の活動を持続していく上で、最も重要であり青年会議所運動の根幹とも言えます。それは仲間づくりや組織の強化だけでなく、地域の未来を考える青年が集い、青年会議所で得られる経験や知識をもとに自己成長し、家族や会社を含む地域社会に還元していくことが可能だからです。言い換えれば、会員個々が自己成長していかなければ会員の拡大はもちろん、地域の更なる発展に寄与することができません。(一社)妙高青年会議所はこれまでの会員拡大の成果により、近年50名前後の会員で活動しておりますが、今後もこの流れを会員全員で継続していかなければなりません。新たな同志を増やし、想いを共有し交流する中でこれまで以上の活動へと昇華していきましょう。それが、(一社)妙高青年会議所42年間の歴史と先輩諸氏に対する最大の感謝のかたちであると信じて。
結びに
人は誰もが限られた時間の中で生きていきます。何も考えなくとも、何も行動しなくとも時は刻一刻と過ぎ、一生が終わってしまいます。であるならば、我々青年は一瞬一瞬に己を込め、後悔のないよう全力ですべてに挑戦し続けることが先駆者たらんとする理想の姿だと考えます。この姿勢と感謝の心を忘れることなく中庸の精神を持って、会員個々の力を結集し、地域の更なる発展と未来のために活動してまいります。
最後に、関係各位並びに地域の皆様方より、より一層の御理解と御協力を賜りますことをお願い申し上げ、私の所信といたします。
スローガン
Challenge!
〜自己とまちの可能性を信じて〜
基本方針
・自己とまちの可能性を信じ、地域の未来のため何事にも自ら進んで挑戦していこう。
重点事業
・妙高地域活性事業の実施
・コミュニケーション共育事業の実施
・妙高連携事業の実施
・会員の拡大と資質の向上
・会員同士の交流促進
・継続事業の実施