一般社団法人妙高青年会議所2023年度理事長 堀 俊介
はじめに
戦後日本は、国そして国民がこれからの生活に不安を抱き、心身ともに疲弊している中、世界も驚くほどのスピードで復興・発展を遂げ、今日では世界有数の先進国の地位を築き、国民は豊かな暮らしを享受しています。ここにいたるまでには、古くから日本人が勤勉で他者を思いやる心を持ち、先人たちが未来の日本を思い描きながら尽力していただいたことは想像に容易いですが、終戦後に世界からいただいた支援も、大きな要因であるのではないでしょうか。島国で資源や土地の乏しい日本ですが、高い技術力を有し、高度経済成長期をへて「安価で高品質」のグローバルスタンダードを獲得し、多くの民間企業が海外に拠点を構え発展・成長していきました。流通網の整備や労働力を得る中で、発展途上国などには、技術力の提供や国としての支援・援助を実施し、お互いに成長し、それは今も変わらぬ現在進行形であります。情報ネットワークが発達し、交通網が整備され様々な産業が世界と繋がり、その土台の上で今を生きる私は、2022年2月24日、あの日のできごとがなければ、それが当たり前で普通のことのように過ごしていたかもしれません。私たちが普段通りの日常を過ごしている中、ロシアによるウクライナ侵攻が開始されました。ロシア側の真偽はわかりませんが、自国民と領土を守る正当防衛との名目のもと、ウクライナに甚大な被害をもたらし、またその影響は世界中に拡がりをみせています。グローバル経済に大打撃を与えている現状を踏まえ、改めて感じることは、同じ地球という惑星に暮らし、国や文化は異なるかもしれませんが、同じ空、同じ海、同じ光を共有し、お互いに様々な分野で関わり生きていることです。人は1人では生きていけません。水を飲む、電気をつける、物を買う。日常当たり前のように行っていることも、必ずその前段で他の誰かが関わっているはずです。昨今、地球温暖化、人口増加による穀物不足など、人の営みが未来永劫続いていく為に必要不可欠な問題が山積しています。国連が定めたSUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(持続可能な開発目標)に向かって各国が足並みを揃えようとしている今だからこそ、お互いに手を取り合い、歩んでいくことが必要なのではないでしょうか。またそれは国や地域、そこに生活する人に置き換えたとしても同じことが言えるはずです。
過去から現在そして未来へ
日本の青年会議所は1949年、明るい豊かな社会の実現を理想とし、確固たる意志と情熱をもった青年有志によって誕生しました。妙高青年会議所は1975年、全国で593番目の青年会議所として発足し、我々の住む妙高の明るい豊かな社会の実現に向け、その時々の地域課題に正面からぶつかり、事業という形で様々な活動を展開してきました。本年で48年を迎えるにあたり、およそ半世紀も長きに渡る活動を継続できていることは、崇高な理想のもと、偉大なる先輩諸氏がたゆまぬ努力で活動していただいたことは勿論、地域が歩んでいく中に、我々のような市民活動団体が少なからず必要であると感じずにはいられません。インフラが整備され利便性の向上した現代社会において、新型コロナウイルスの影響も相まって、人々の働き方、時間や物への価値観が変化してきています。ニーズが多様化している中、今までのような単独での事業展開や事業構築が難しいこともあるかもしれません。最近よく耳にする言葉ですが「JCしかなかった時代から、JCもある時代」今では妙高地域においても、様々な各種団体がそれぞれの理念を掲げて活動している中、我々が地域の課題を抽出し、青年会議所の理想、そして立ち位置を明確にして、行政また各団体と相互連携を図っていくことも必要であります。2022年、JC宣言が変わりました。結びはこうです「持続可能な地域を創ることを誓う」これから迎える50年、そしてその先を見据え、持続可能な妙高を創る我々であり続けます。
妙高の為に、子どもたちの為に
私たちが暮らす妙高は、春には新緑と広大な田畑を苗が埋め尽くし、夏には高温多湿の日本を象徴するような湿気と猛暑が襲い、秋には黄金色に輝いた稲穂や山々の紅葉が景観を潤し、冬には寒さとともにあたり一面を真っ白な雪で覆われます。五感で日本の四季を感じられる素晴らしい地域であります。近年では高速交通網の整備の恩恵を受け、自然を活用したレジャーや、温泉などの観光業に着目し交流人口の増加を図り、新型コロナウイルスの影響で本格的に始まった、テレワーク層をターゲットにした施設を整備するなど、地域外からの人の入込に注力しています。全国各地の市町村で同様の動きが活発になっていることが、メディアなどを介して伝わっているのには理由があるはずです。なぜならそれは日本全体で人口が減少しており、それは地方に向かうほど暗い影を落としていることにほかなりません。「妙高人口ビジョン」の分析によると、妙高市においては現在30000人強の人口が、2040年には22000人程度まで減少するという信じ難い推計がでています。人口の減少は経済をはじめ行政サービスなど、様々なことに波及し、悪循環をもたらします。この地に生活する我々が、この問題に対して当事者意識を持ち、未来ある妙高の為に様々な活動を展開していきます。
子供は夢を描き明るく元気に遊び、よく食べよく眠る。あり触れた日常の中で、家族や友達や学校で、作法・道徳心・協調性など多くを学び、少しずつ大人の仲間入りをするのだと感じていました。近年メディアの発達により、様々なツールを通して子どもたちも自分自身では分別がつかないたくさんの情報を簡単に得ることが可能となり、それを自身の経験として昇華している傾向があるように感じます。一概にその中身の良し悪しはさておき、他者と触れ合う中でしか経験できないことが、世の中にはたくさんあるはずです。近年妙高市では、コミュニティースクールなど地域で子どもたちを育んでいく共通認識・土台が整いはじめています。子どもは純粋で簡単に影響されやすいのかもしれません。しかしその清らかな心は、何事にも前向きに多くのことを吸収していくでしょう。家庭や学校では経験できないような実体験を与えてあげることで、子どもたちは更に大きく成長するはずです。我々大人が未来ある子どもたちの為に、責任意識を持ち活動を展開していきます。
円滑な組織の運営
新型コロナウイルス感染症の影響で、我々の活動も大きく変化しました。当たり前のように集まって議論を交わしていた会議などは、オンラインに代わり、各事業に関してはコロナウイルス感染症対策を念頭に置いた事業構築にはじまり、多くの参加者を巻き込んだ事業などは皆無に等しい状況が続きました。早いもので3年が経過した現在、ワクチン接種が進み、国による規制緩和が行われ、新型コロナウイルス感染症と共存する生活へと移行しています。対面で議論を交わすことは、受け答えが早いことは勿論、言葉に発言者の想いや熱量が重なり、有意義な議論になりやすく、また会員同士の絆が深まり当事者意識の向上など、組織としてプラスに働く要素が多くあるのは事実です。あらためて円滑な組織の運営において何が必要か考えたとき、まずは組織や個人としての規則を守り活動していくことは大前提ですが、会員全員が情報を共有し、一枚岩となって同じ目標に向かって活動していくことだと考えます。市民活動団体である我々は、地域の課題に向き合い、事業を通じて地域に貢献していきます。このサイクルを持続させていく為には会員の力が不可欠です。コロナ禍で急速に普及・発達したオンライン会議など、現代のICTを上手に活用しながら、会員が参加しやすい、活動しやすい環境を整え、柔軟な発想で組織の運営を行っていきます。
会員の成長、会員拡大による持続可能な団体へ
青年会議所は20歳から40歳までの、職種も多岐にわたる青年経済人が在籍している団体です。別々の暮らしをしている会員が、「奉仕」「修練」「友情」の3信条を胸に抱き、多くは夜に集まり議論を重ね、時には身体に鞭を打ち、時には様々な時間を割いて、妙高の明るい豊かな社会の実現に向けて活動しています。事業を実施したことへの達成感や、人に感謝されることへの高揚感、そして会員同士の深い絆など、個人によって解釈は違えども、学びや気付きが多い団体であることは事実です。しかし、あくまでも営利を求める団体ではありません。言い方を変えれば、青年会議所活動を命がけで頑張っても生活していけるわけではないのです。青年会議所にご理解いただいている、会社や家族、そして自分自身の為にも、我々は活動を通じ青年経済人として、親世代として、成長していく姿をみせることは至極当然であり、そして会員の成長は組織の原動力となり、多くの事業へと活かされていくはずです。会員が自己研鑽する機会を創出し、好循環で魅力ある組織へと改革していきます。
妙高青年会議所が発足してから48年目を迎え、再来年には半世紀が経過します。前項でも申し上げた通り、これだけの歴史を紡いできたのは、その時々の会員たちが地域に寄り添った効果的な事業を展開してきた成果であります。現在、妙高青年会議所は会員が減少しています。人口が急激に減少している日本において、我々のような団体もそのような傾向に降り立つのは必然なのかもしれません。しかし、この歩みを終わらせるわけにはいきません。48年の間受け継がれてきた理想を、今を生きる我々は次世代へしっかりと繋いでいくことが責務であります。様々な手法やツールを用いて会員拡大に注力し、これからも妙高地域と共に歩む妙高青年会議所であり続けます。
結びに
2023年度、一般社団法人妙高青年会議所は「気概」のスローガンを掲げ、各種事業を展開してまいります。会員が理想である「明るい豊かな社会の実現」を胸に宿し、お互いに支えあいながら1年間最後まで職務を全うしてまいります。第48代理事長として会を先導し、地域に持続的に必要とされる組織となるべく、気概をもって活動してまいります。
関係各位並びに地域の皆様からの、より一層の御理解と御協力を賜りますことを心よりお願い申し上げ、私の所信とさせていただきます。